1.夏、涼しく過ごしたい! ― 遮熱がポイント ―
断熱、気密化が進み、少ない熱で効率よく室内の温度が保てるようになりました。冬の寒い時期には効率の
良い暖房に加えて、窓からの陽射しがポカポカと心地よく暖かく、快適さを増します。
問題は夏の暑い時期なのです。ギラギラと照りつける太陽の光が屋根面や壁面を容赦なく熱します。高気密・高断熱の家は、一旦部屋の中にこもった熱は壁や天井などに蓄えられてしまい、それがじわじわと放散されて、夜暑くて眠れないということになるケ−スが多いのです。これを解消しようとエアコンをガンガンかける。これでは省エネどころではありませんし、身体によくないですよね。
では、どうやって対処すればよいのでしょうか?屋根の遮熱については別の項で考えるとして、ここでは壁面、そのなかでも特に熱の侵入しやすい窓についての遮熱を考えてみましょう。
遮熱の原則は“外側で熱を遮る”ことなのです。熱を家の内側で遮るか外側でシャットアウトするかで、その効果は全く違ってくるのです。つまり、熱を遮断するものが家の内側にあっても、陽射しが当って暖まった遮蔽物そのものから再び部屋の中に放熱されてしまい、結果として、部屋の温度が上昇してしまうのです。これに対して、家の外側で熱を遮った場合は、その熱は家の外側に放熱されるために、部屋にはほとんど入ってこないわけです。
夏の陽射しが強いことはご存知のことなのですが、遮熱対策として重要なのは、日射の角度なのです。日射の角度は南では高く、東西では低くなります。したがって、陽射しの対策も南面と東西面で分けて考えた方がよいでしょう。
@ 南面の対策
家を明るく保つためにも、冬の太陽をたっぷりと取り入れるためにも、南側の窓は広く大きくとりたい。これは当然のことですね。しかし、夏にはその窓から多量の日射が入ります。夏と冬では太陽の高度に差があり、夏は高く冬は低くなります。(確か小学校位の時に習いましたね。)特に夏の南面はいちばん太陽高度が高いのですが、この日射を遮ることが必要になるわけです。
私たちがプランを考えるときに気をつけるのは、このことに注意して南面の窓のひさしや軒の出の長さを決めることです。つまり、夏の日射角度の高い強烈な陽射しは、できるだけ遮り、日射角度の低い冬は、暖かい陽射しをうまく部屋の中に取り入れることができるように、ひさしの出の寸法を決めるのです。
そのほか、オ−ニング(日よけテント)や水平ル−バ−を取り付けることも、南面の効果的な遮熱対策になります。
A 東西面の対策
皆さんのなかにも経験されている方も多いと思いますが、夏の夕方に真っ赤に輝きながらジリジリと照りつける「西日」これが結構、厄介者なのです。東西面は太陽の位置が低いので、陽射しが特に強い(壁面に垂直に当る)ということと、その太陽が、西からさらに北に回りこんで沈んでいくために、日照時間も長いからなのです。まして、水平に入り込んでくる陽射しは、ひさしや水平ル−バ−では遮ることが難しいのです。
この西日対策として有効なのが、なにを隠そう“すだれ”や“よしず”でしょう!これらを窓の外に掛けたり立てたりすることで、日射を遮蔽し、室内は涼しくなります。古くからの先人の知恵ですね。
現在では、サッシのガラスにも熱線を遮蔽してくれる製品もありますし、ガラス面に熱線や紫外線を遮蔽してくれる高性能フィルム(フィルムといっても性能にピンキリがあるので、選ぶには注意が必要です。)を貼るのもひとつの方法です。
また、家の全体配置計画のなかで、西面の窓の前に植樹するか、既存の樹木をうまく利用してその木で日射を遮り、木陰で遮熱するというのも理想ではないでしょうか。
いずれにしても、遮熱のポイントは、「家の外で日射を遮って、室内に熱を入れないこと」です。
2.屋根の遮熱を考える
屋根に求められるのは、雨や風からの防護機能、外部音に対しての遮音機能、内部の音の防音機能、はもちろんのこと、冬の寒さからの断熱機能や夏の陽射しからの遮熱機能です。
風雨からの防護機能は、構造的に基準をクリアし、確実な施工を行えば確保できるでしょう。
遮音・防音機能については、高気密住宅で気密工事を確実に行い、気密性能を満足できれば、問題のない性能は得られます。
断熱機能についても、高断熱住宅であれば断熱材の種類や施工位置に違いはあるにせよ、冬の寒さに対して部屋の中は断熱性は保たれますので、問題のないところでしょう。
つぎに、夏の陽射しからの遮熱機能ですが、この機能が今までの高気密・高断熱住宅に欠落していた機能なのです。
今までの数多くの高気密・高断熱住宅の工法で、混同して考えられていたのが“陽射しの遮熱”と“冬の断熱”なのです。実際、外張り断熱工法でも屋根に断熱材を設置することで、断熱も遮熱も満足させようとしているのが現状のようです。しかし、関東以西では夏の遮熱を断熱材のみでカバ−しようとすると、冬の寒さ対策用の断熱材としてはオ−バ−スペックになってしまうのです。つまり、冬の寒さ対策の断熱だけでは夏の遮熱を満足させるには不十分ということになります。これからは、断熱とは別の機能として、屋根の遮熱を考えていかなければ十分とはいえないでしょう。
夏に屋根が受ける日射エネルギ−は非常に大きく、屋根材の表面温度は、カラ−ベストですと80℃を超えてしまいます。その熱が、屋根に断熱材を設置していたとしても小屋裏に伝わり、その温度は35℃〜40℃近くにも達します。
天井のふところを古い民家のように大きく確保していない近代の住宅では、昼の陽射しの熱が小屋裏の垂木や梁などに蓄熱してしまいます。そのこもってしまった熱が、夜になって太陽が沈んだあとにじわじわと放熱し、毎晩が熱帯夜にならざるを得ないのです。
では、有効に屋根の遮熱を満足させるにはどうしたらよいのでしょうか。
その方法のひとつは、屋根材の下に通気層を設けること、そしてもうひとつは、屋根面の断熱材に加えて、遮熱層を設けることです。
最近では通気工法が常識のようになっていますが、この屋根面の通気層が遮熱に大きく貢献しているのです。外壁や軒裏からの空気が屋根の下面を通り、棟から排出されることで、熱せられた屋根表面材の熱が内側に伝わる量を減少させ、夏の小屋裏温度の上昇を抑えるのに有効なわけです。
昔の日本の住宅は、萱葺きか瓦葺が当たり前であったので、特に通気のことを考える必要もなかったのです。つまり、萱葺きの場合はそれ自体が断熱材でもあり、空気の流通するすき間がたくさんあったわけです。瓦葺にしても、瓦一枚一枚が下にすき間を取って葺いていくので、その下は外気の出入りが自由であったのです。
しかし、現在では、スレ−ト葺きや金属板葺きのように、表面材の下に外気が通らない材料と葺き方が多くなってきました。そのための工夫として通気層を設けるわけですね。
もうひとつの方法、遮熱層を設けるということについては、各メ−カ−側も、屋根の遮熱には断熱材だけでは不十分であることを認識しはじめ、様々な遮熱材料を提案しています。
熱が伝わるには、「伝導」、「対流」、「輻射」があります。(詳しくはこちら)
断熱材を設けることにより「伝導」を軽減し、上記で説明しました通気層により「対流」する熱を棟から排出します。残った「輻射」熱に有効に対応するものが、今まで考えてこられなかったのです。
そこで、最も効果的であると思われるのが、輻射熱の反射作用に優れ、かつ軽量な材料、“アルミ”です。アルミをシ−ト状に加工した材料を断熱材に貼り付けて遮熱層とすることにより、有効に輻射熱の内部侵入をとめることができます。
屋根の遮熱には、日射熱の伝導・対流・輻射に対応する断熱層・通気層・遮熱層の3つのキ−ワ−ドがポイントとなるでしょう。
|