2.高気密じゃなくてもいいんじゃない?
「断熱性能が大切なのはなんとなくわかるが、気密性能って本当に必要なの?」
「高気密にすると閉鎖的になって息苦しくなるんじゃないの?」
という意見をよく耳にします。では本当のところどうなんでしょう?「気密」については設計者によってもいろいろな意見があります。
しかし、紆余曲折の末、私たちは「高気密・(高断熱)住宅」こそ“住まい手” “家” “環境”にとってベストであるという考えにいたり、様々な工夫でより完成度の高い住宅づくりへと日々まい進しているわけです。では、なぜ高気密が必要なのでしょうか?
理由その@ ―高気密は無駄な換気により熱が逃げてしまうのを防ぐ!―
断熱化を進めていくと冷暖房効率は高くなり、エネルギ−の消費は少なくなります。
ただし、気密性のない住宅ですとすきま風や換気による熱の損失が大きくなり、断熱化だけでは熱損失を小さくすることに限界があることがわかっています。
つまり、高気密化は省エネルギ-にも大きくかかわっているのです。
理由そのA ―高気密化は換気を思うようにあやつれる!―
平成15年7月より建築基準法が改正され、今までほとんどの家にはなかった24時間の換気設備が全ての
居室に必要となったのです。ただし例外があって、相当隙間面積 C=15cu/u以上の居室には設置しなくても良いのです。
ちなみに日本で、ここ20年くらいに建てられた木造の住宅のC値はだいたい5〜10の間になっているようです。ですからC=15の家というのはどれだけすき間だらけの住宅であるかがわかりますし、今の日本の住宅はどちらにしろ24時間換気が必要だということになります。
近年、シックハウス症候群が注目されている中、汚染物質を排出する機能が最低限必要になったわけです。
そこで「高気密」が力を発揮するのです!換気の原則は「常に空気の出入口を明確にして、必要な量の換気をすること」(詳しくはこちらへ)ですから、気密性が高くないと空気の出入口は定まらないし、換気の量も外部の風向きや風力によって変化してしまい、とても計画的で効率の良い換気は望めないのです。
理由そのB ―高気密化は壁の中で結露が発生するのを防げる!―
断熱化だけを行い気密のない住宅では、冬期、室内の湿った空気が壁の中に入り込みそこで冷やされて結露してしまいます。(詳しくはこちらへ)
見えない場所で起きるため、気づいたときには木材の腐朽、かび・シロアリの発生、断熱性能の低下等、重大な影響を与える場合があります。気密シ-ト等で室内側には防湿層を設け室内の湿気を壁の中に侵入させな
い、外部に対しては湿気を逃がしてやる工夫をすることで、壁の中は常に乾燥した状態に保たれます。
気密化は住まい手に対しても、住宅に対しても健康であることとなるわけです。
3.ここを押えておけば安心!「気密住宅のポイント」
ポイントその@ ―気密性能―
気密性能はどのように評価すればよいのでしょう?
具体的には住宅の内と外の圧力差などによって、どのくらいの空気が出入りしているのかを評価します。
そのため、個々の現場により施工精度等に大きく影響しますので、机上の計算では把握できないのです。
そこで、実際の現場において適当な時期(断熱・気密工事の完了時と建物引渡し前の2度実施するのが望ましいでしょう)に大きなファンの付いた“気密測定器”を用いて室内の空気を強制的に排出し、外部との気圧差等を測定することにより「相当隙間面積」を算定します。(算定式は複雑ですので、実際は機械が自動的に計算してくれます。)
一定基準に達しない場合は気密を高める工事を施し、再度検査します。数字で結果がでますから、大工さんたちの技術のレベルアップにも役立ちますし、性能を保証する大切なテストとなります。
では、実際にどのくらいのC値があれば性能が確保されているといえるのでしょう。C値が小さいほど気密がいい住宅となるわけですが、国の定める次世代省エネ基準は北海道や東北地域内陸部等ではC=2.0cu/u、その他の地域ではC=5.0cu/uを基準としています。
しかし実際、断熱性・計画換気を考えますと、比較的温暖とされる地域であってもC=2.0cu/u以下とする必要があると考えますし、私たちはC=1.0cu/uを目標として取り組んでいます。

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