1.「断熱」について知っておきたい言葉や数字
その家の断熱性能は断熱材の素材や、厚さだけで判断するのではなく、建物の構造や工法、屋根、床、壁等の材料や断熱の仕方、窓などの開口部の性能、気密性、換気性能など様々な要素を計算し、その結果として建物その者の断熱性能を表す「熱損失係数(Q値)」などで判断されます。
複雑な計算は専門家に任せるとしても、消費者としてその性能をある程度比較したり、判断したりできるだけの知識は持っておきたいですね。
@熱伝導率(W/m・K:温度差が1℃のとき、1mの厚さの物質を1時間に流れる熱量)
コンロの上でグラグラ沸騰しているやかんに直接触ることはできませんが、やかんのとっては触ることができます。これはなぜなんでしょう?
これは、熱の伝わり方の違いによるものなのです。物質には、熱を伝えやすいものと伝えにくいものがあり、物によって熱の伝わる早さの度合いが決まっているのです。これを熱伝導率といいます。熱の伝わりやすいものは熱伝導率が大きく、反対に小さいものは伝わりにくいのです。
(物 質)
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(熱伝導率)
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銅
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400
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アルミニウム
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240
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鉄
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85
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ガラス
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0.6
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水
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0.6
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プラスチック
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0.2
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木
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0.2
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やかんのとってが熱くないのは、とっての部分に熱伝導率の小さなプラスチック等を使っているからです。
A熱貫流率(K値:W/u・K:温度差が1℃のとき、1時間のうちにその壁体1uを通過して逃げていく熱量)
熱貫流率は、熱が伝導する素材と厚さで計算され、熱貫流率 K=(その物の熱伝導率)/(その物の厚さ) で表されます。したがって、同じ熱貫流率を得ようとすれば熱伝導率の小さな断熱材ですと、厚さを薄くできます
し、熱伝導率の大きな断熱材だと厚さを厚くしなければならないということがわかりますね。
B熱橋
熱貫流率を計算する際に注意しないといけないのが、「熱橋」です。このあまり聞きなれない言葉、熱橋とは
何でしょう。
外壁に断熱材を貼り付けたり充填する場合に、柱や梁の木材等により断熱材の厚みが薄くなったり、断熱材がまったくなくなってしまう部分が生じる場合があります。特に柱と柱の間に断熱材を充填する内断熱工法に多いのですが、この熱貫流率が部分的に大きくなる部分のことを「熱橋(ヒートブリッジ)」といいます。この熱橋部分を補うように断熱を工夫してやる必要があるわけです。熱貫流率を計算するときは、熱橋のことを考慮して計算する必要があることを覚えておきましょう。
C開口部の断熱性能
建物の外壁や屋根、床等からの熱の損失を防ぐには熱伝導率の小さな断熱材を厚く取り付ければよいことはわかってきましたが、実は窓や玄関ドアなどの開口部の方が壁や屋根以上に大きな熱が逃げていってしまっているのです。つまり、開口部の断熱性能も重要なポイントになってくるのです。
開口部の断熱性能を判断する物差しも外壁等と同様、熱貫流率(K値)で表されます。開口部の熱は主として (1)開口部の枠材を伝わって逃げる熱と
(2)ガラス部分から伝わって逃げる熱があります。今まで枠材は
アルミ製のものが主流でしたが現在では木製のものや樹脂製のもの、それぞれ複合されたもの等が開発されていますし、ガラスについても複層ガラスが常識となりつつあります。これらの性能を加味して表示されるの
が、開口部の熱貫流率です。断熱サッシのカタログに表示されている断熱性能の等級(H-1〜H-5)(数字の
多い方が性能は良い)は、それぞれこの熱貫流率に対応した形で表示されています。
D熱損失係数(Q値:W/u・h・℃:外気温と内部の温度差が1℃としたときの、外壁、屋根、床、開口部を通して 外部に逃げる熱の量と換気によって損失する熱の量の合計を、延べ床面積で除した数値)
ひらたく言うと、建物全体で逃げる熱量の単位面積あたりの数値のことであり、当然、値の小さい方が断熱性能に優れていると判断できるのです。
次世代省エネ基準の熱損失係数の基準値一覧です。
地域 T U V W X Y
Q値 1.6 1.9 2.4 2.7 2.7 3.7
住宅の熱損失係数が地域の区分に応じて基準値以下であること、となっています。
建物全体の断熱性能を表す熱損失係数(Q値)は、建物のすき間や換気によって損失する熱量も計算しなければならないのですが、この目に見えない隙間から漏れる熱や換気によって失う熱の量も想像以上に大きなものになるのです。

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