B シックハウス対策
○ シックハウス症候群とは…
シックハウス症候群とは、住宅の新築や改装工事後、住宅建材から室内に発生する揮発性化学物質やダニアレルゲンが原因で、体調不良や健康障害を引き起こすこと、といわれていますが、いまだにその定義は明確にされていません。
主な症状としては、頭痛、喉の痛み、目の痛み、鼻炎、嘔吐、呼吸器障害、めまい、皮膚炎などが上げられますが、病気としてのメカニズムと治療法も解明されておらず、医療分野でも対応が整備されていないのが現状です。この状況を踏まえると、建材メ−カ−、施工者、そして消費者も自らの手で安全・健康を確保することを考えなくてはならないでしょう。
○ 有害化学物質の指針値
厚生労働省よりVOC(揮発性有機化合物)の室内環境濃度に関する規制対象物質として2001年4月に8物質、7月に3物質、2002年2月に2物質、計13物質についての指針値が示されています。下記に示した指針値は、人がその化学物質の示された濃度以下の曝露(さらされること)を一生涯うけても健康への影響を受けないであろうとされる判断により設定されたものです。ただし、これらの数値と発症との因果関係は個人差が大きく、これらの数値以下でも発症したり、より高濃度でも発症しない場合があるようです。
物質名
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室内濃度
指針値
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主な用途
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健康への影響
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ホルムアルデヒド |
0.08ppm |
合板・壁紙 |
鼻・咽頭の刺激、くしゃみ、咳、吐き気、呼吸器障害 |
トルエン |
0.07ppm |
接着剤・溶剤 |
倦怠感、知覚異常、吐き気 |
キシレン |
0.20ppm |
溶剤 |
眼・咽頭の刺激、知覚障害、吐き気 |
パラジクロロベンゼン |
0.04ppm |
防虫剤 |
眼・鼻・喉の刺激、吐き気、肝・腎機能低下 |
エチルベンゼン |
0.88ppm |
塗料・接着剤 |
眼・皮膚・気道の刺激、中枢神経への影響 |
スチレン |
0.05ppm |
発泡スチロ−ル |
眼・皮膚・気道の刺激、喘息 |
フタル酸ジnブチル |
0.02ppm |
プラスチック |
吐き気、頭痛、めまい |
クロルピリホス |
0.07ppb |
シロアリ駆除剤 |
倦怠感、吐き気、頭痛、めまい |
テトラデカン |
0.04ppm |
灯油・塗料 |
皮膚病 |
フタル酸ジ2エチルヘキシル |
7.6ppb |
プラスチック |
皮膚病、消化器系疾患 |
ダイアジノン |
0.02ppb |
殺虫剤 |
神経障害 |
アセトアルデヒド |
0.03ppm |
接着剤・防腐剤 |
頭痛 |
フェノブカルブ |
3.8ppb |
シロアリ駆除剤 |
呼吸困難 |
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※ppm:百万分の一の濃度 1ppm=0.0001% ※ppb:十億分の一の濃度 1ppb=0.0000001%
○ 建築基準法での規制
2003年7月、建築基準法が一部改正され、シックハウス対策に係る規制が適用されました。その概要を下記に示します。
規制対象化学物質
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規制の内容
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クロルピリホス
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居室を有する建築物には、クロルピリホスを添加した建材の
使用を禁止する。 |
ホルムアルデヒド
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・内装仕上の制限 |
居室の種類および換気回数に応じて、内装仕上に使用するホルムアルデヒドを発散する建材の面積を制限する |
・換気設備の義務付け |
ホルムアルデヒドを発散する建材を使用
しない場合でも、家具等からの発散があるため、原則としてすべての建築物に機械換気設備の設置を義務付ける |
・天井裏等の制限 |
天井裏等は下地材をホルムアルデヒドの発散の少ない建材とするか、機械換気設備を天井裏等も換気できる構造とする |
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では、どうすればいいの? ― その答えは「空気をきれいに」 ―
規則正しい生活、適度の運動と十分な睡眠、バランスのよい食事、…人が健康な暮らしを送るためには様々な要素があります。しかし、最も大切な要素のひとつは「空気」ではないでしょうか。
日本人は「空気」「水」「安全」は、ただで与えられるものという根強い風潮があります。最近では健康増進によい「水」をお金を出して買うという意識変化が起こり、「安全」ということにも防犯対策等身の回りのことから、国家の安全保障や憲法改正の論議までの高まりを見せています。ただし、「空気」については、まだまだ意識が低いように見受けられます。
人は生涯、我が家でどれだけの空気を摂取するのでしょうか。質量に換算して人が一生涯に摂取する物質の83%が空気で、57%が室内空気という計算になるというデ−タもあります。食物内に含まれた有害物質は、胃や腸または肝臓というフィルタ−を通って体内に侵入するのに対して、空気中に存在する化学物質等は粒子がきわめて小さく、鼻や肺の粘膜から直接血液等に溶け込み、簡単に体内に侵入してしまいます。きれいな空気のなかでの生活こそ、すべての活力の源ではないでしょうか。
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